ぷわぷわの海老天

もう何年前のことか数えるのも億劫だけど、その日私たちは駅のそばのコンビニかスーパーで海老天を買った。3人いるけど2つしかなくて、1人はたぶんかき揚げだった。

陳列棚に小さな小さな小瓶に詰められてるジャムを見てこんなのあるんだなと思っていた。

 

それから歩いて、家に帰って、年越しそばを食べて新しい年を迎えた。

お湯をどんぶりに淹れて器を温めておくことで、出来上がったそばを移したときに冷めにくくなると言っていて、そんなことも初めて知ったから、驚いた。

 

その家は特別な場所で、私たちは夜遅くに集まっては始発を待った。

気づいたら眠りかけていて、毛布をかけてもらって泣きそうになった。修学旅行の夜のように、私たちは半分寝ながら暗い天井を見つめて二、三言言葉を交わした。

 

子どもだったとも思うけど、大人になった後じゃ話せなかったことを話す相手だった。

連絡が取れなくなって、だけどわざわざ深追いしようとも思えなくて、ただ、とても大事な相手には違いないから、生死は問わないので苦しまずにいたらいいなあと、言葉の通り幸せを願った。

 

年越しそばのおつゆを吸ったぷわぷわの海老天を見たらそんなことを思い出す。